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息するは神秘
活かすは謎

からだ為(な)すや
交感

こころ為(な)すや
変容
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# by hitohiso | 2013-01-05 17:36
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智慧・即・慈悲(ちゑ は ぢひ)
慈悲・即・幸福(ぢひ は しあわせ)
幸福・即・空観(しあわせ は くうがん)
空観・即・智慧(くうがん は ちゑ)
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# by hitohiso | 2013-01-05 17:34
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「あ」―愛―あいあらば
「い」―命―いとしきいのち
「う」―運―うつくしき
「え」―円―えいえんなるは
「お」―恩―おどりなればや

「か」―風―かかわりて
「き」―氣―きもちよく
「く」―苦―くすしき
「け」―消す―けはい
「こ」―恋―こいこころ

「さ」―再生―さようなら
「し」―死滅―しづかに
「す」―数奇―すきよ
「せ」―世界―せいせいと
「そ」―添い寝―そっとね♪

「た」―只―ただいま
「ち」―智―ちるや
「つ」―通―つったちて
「て」―点―てんち
「と」―朋―ともとも

「な」―何―なんとなし
「に」―忍(にん)―にを(匂)うや
「ぬ」―主(ぬし)―ぬればいろ(濡場色)
「ね」―根―ねころびて
「の」―能(のう)―のんき♪

「は」―母―はいやはい
「ひ」―聖(ひじり)―ひるがえりて
「ふ」―普遍―ふきさく(吹き咲く)
「へ」―変容―へそのを
「ほ」―本然―ほしのおと☆

「ま」―舞―ままな(成)らぢ
「み」―身振(みぶ)り―みかい(未開)のままに
「む」―無為(むい)―むが(無我)をな(為)す
「め」―盟友(めいゆう)―めあき(目明き)の
「も」―勿論(もちろん)!―もうてん(盲点)

「や」―闇へ―やさしくも
「ゐ」―居坐(ゐざ)!―ゐき(息・意氣)
「ゆ」―愉悦(ゆゑつ)や―ゆれるや
「ゑ」―縁(ゑにし)の―ゑん(円・演)たる
「よ」―余白とぞ―よろこび

「ら」―乱―らく(樂)したる
「り」―龍―りり(凛凛)しき
「る」―涙(るい)―るろう(流浪)
「れ」―零(0)―れいぎ(礼儀)にや
「ろ」―老―ろまん(浪漫)

「わ」―和―わ(和)す(忘)るは
「を」―音―をとつ(音連・訪)れ
「ん」―無―んとなさん・ん・ん・ん
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# by hitohiso | 2013-01-04 20:12
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性交したるは吾(あ)が身なれども
享樂(きょうらく)せしや汝(な)が美空(みそら)

仕合せたれよ吾等が天地
時空つらぬく深海の孤島
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# by hitohiso | 2013-01-04 19:58
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一人静の白浜は死の佇(たたず)まいを魅(み)せ、
瑠璃(るり)の貝を愛らしく微笑(ほほゑ)ませる。

円錐(えんすい)型の自転車をこぐ少女の眼差しには、
巻貝の欲望が真っ直ぐ蹲(うずくま)っている。

片翼の天使が唄いかける大地への恋心。
宙天に繭(まゆ)かける薔薇線蟲の憧憬(あこがれ)。

幻母(マーヤ)から授かった慈悲が甘く溶け、
魔法使いからの贈り物は雪と灰になった。

願いの隙(すき)へと押し込む鬼の情熱よ!
どうかそっと愛されますよう・・・
蜜蝋(みつろう)と化した苦行尼よ!
どうぞきっと救われますよう・・・

オブジェンヌの恋人たちを燃やし尽くすまで、
呪術の抱擁(ほうよう)は已(や)まない。
地球との訣別(けつべつ)を果たすまで、
合氣の接吻(せっぷん)は心地好いのだから。
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# by hitohiso | 2013-01-04 19:54
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夏の想い出は、
急速に変化しつつ、
沸騰と冷却を繰り返しました。

秋の装いは、
月の裏側へと、
激しく微塵と散り急ぎました。

冬の囁(ささや)きは、
闇への吾子消(あこが)れから、
一目散と遠ざかりました。

春の芽生えが、
清らかに豪奢(ごうしゃ)されて、
私たちは微笑みましたね♪

再び巡った初夏の只中、
漆黒の太陽が縁辺を燃え上がらせながら、
私達の居場所を奪っていきました。
肌の熱の恋しかった、うすら寒い夏でした。
想い出の地獄が想いの天国を打ち負かしたのです。

この記(しるし)を、
未来永劫の此方(こなた)より、
無限の可能性を秘めて、
彼方(かなた)へと捧(ささ)げます・・・☆
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# by hitohiso | 2013-01-04 19:53
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戦後美術界の重鎮(じゅうちん)、ヨシダ・ヨシエ氏から頂いた、これは舞台「マ・グ・サ・レ」でも使った、四谷シモン作の両性具有人形を携(たずさ)えて、森と泉の深層界に棲(す)まうであろう人形作家と邂逅(かいこう)すべく、清潔この上無いが薄情無類の浅墓で生命不快の極致場である、病院と呼び慣わす現代の処刑場へ向けて、憤怒と憎悪を抑え兼ねながら身悶えしている奴婢人形(Slave-Doll)となって、四分の一世紀ぶりのBALIへと巣立った。
空港を降りた途端、まとわりつく熱氣と花の芳香。
すさまじい排ガスに辟易(へきえき)しながらも、道道のそこかしこに咲くプリメーラの匂いが、我執(がしゅう)の局地から抜け出せない私を、忘我(ぼうが)の領域へと誘(いざな)ってくれる。
朝夕の礼拝が優雅に真摯(しんし)に行なわれ、彼等の誇りに充ちた祷(いの)りの身振りに恍惚となる。
原初の神である水と太陽に守られ、水田の月に蛍が遊び、棚田の美景は麗(うるわ)しく、海上からの日の出と日の入りを満喫(まんきつ)し、海豚(イルカ)と泳ぎ、滝壺で躍った。
炎天下の焼け付くようなアスファルトを裸足で歩く農夫や、重い篭(かご)を頭に載(の)せてゆったりと躍るように運ぶ商人女たち。
清楚(せいそ)な色氣を振り撒(ま)く乙女や、寺での闘鶏(とうけい)に遊ぶ屈強の男たち。
粗雑で頑固ながらも、BALIの人人は率直で敬虔(けいけん)だ。
シャーマニズムそのものの巨大な守宮(ヤモリ)や、透明の瞳を持つ老婆に合ったりしながら、篝火(かがりび)を蹴散らすトランス・ダンスや、竹で組んだ型枠の工事現場の職人たちの笑顔を、驚きながらも冷徹に観た。
何万体もの蝙蝠(こうもり)の棲(す)む洞窟が発する、強烈極まり無い劇臭に襲わて、その日一日中鼻が麻痺したり、伝説の巨人が形作った山に合点したりして、愚かにも違法となった幻覚茸(Magic-Mushroom)を摂取(せっしゅ)した最後の夜は、哀と愛のワンネスを体感し、美醜の垣根を、あらゆる音のシンフォニーで合奏したのだった♪

そして帰国した文月の満月・日蝕の日が、ヒトヒソ館の終焉(しゅうえん)とあいなろうとは、なかなか茶目(ちゃめ)なるシナリオで御坐(ござん)した!
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# by hitohiso | 2013-01-04 19:50
夜来の天(あめ)が泣き叫んでいた文月(ふづき)の晩、エルドラド(黄金郷)と浄土を繋(つな)ぐが如く遠く東西に離れた、茶番と狂氣の空々しい月無し劇。

「一時の快樂が万事の幸福と信じて疑わぬのだな」

自由は渾沌(Chaos)として未在。
具象は観念からの顕在化(けんざいか)。

悪霊が疲れる程、躍り狂ゑ!
覚醒を目暗ます程、踏み惑(まど)うのだ。

売笑する輩(やから)は狂った知性を買うだろうし、罵倒(ばとう)する同胞(はらから)は憎悪の贈り物に驚喜するだろう。

神は痴呆だ。
無は天災だ。
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# by hitohiso | 2013-01-04 19:40
露悪(ろあく)は趣味では無いが、
偽善(ぎぜん)は生理でも無い。
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権威の不届き者たちは、オブジェンヌの恋人たちを見回しながら、私に手錠ダンスを披露(ひろう)させ、徒労と無智を蒙昧(もうまい)へと憐(あわれ)れみながら、覆面(ふくめん)鉄格子へと向かう。
躍る自由と躍らせぬ不自由との懸隔(けんかく)は、甚(はなはだ)だしく重く深い。
カンチガイを犯し続けながらその自覚が無い故、永遠に去らぬ不幸。
動揺する自身の甘さに酔い痴(し)れる他愛無さよ!
胸焼けする綺麗(きれい)事を平らげ、喚(わめ)き散らす檻(おり)の中の退屈と不安を、備え付けの味氣なさで紛(まぎ)らわすしか無い子供っぽさ。
鈍磨(どんま)への恐怖か、敏感への錯乱か、優等生をめかし込んで、意地糞も顔色も暗く悪い、腹黒で淫色な眼つきの執行猶予に傅(かしづ)く為体(ていたらく)。
洗脳によって決して瞑(つむ)る事が無く、錯誤に縛(しば)られたまま見開かれた目。
無智という闇が凝固(ぎょうこ)した光の玩具は、恐ろしく静かに発狂していた。
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# by hitohiso | 2013-01-04 19:29
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須(すべから)く行為は演技であり、
遍く(あまね)く身振りは演奏であろうよ♪
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# by hitohiso | 2013-01-04 19:12
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仕合(しあわ)す手前の足踏みも、
仕合(しあわ)す合間の足音へ吸い込まれて了(しま)うと、
仕合(しあわ)す後先が満足なほど、
仕合(しあわ)しては詰(なじ)る不幸は、
仕合(しあわ)せへの狂昧(きょうまい)となり、
仕合(しあわ)せからの惑乱(わくらん)となろうもの。
仕合(しあわ)せは観念の美のよう空奇(うつく)しく、
仕合(しあわ)せは智慧の力のように馨(かぐわ)しいのに・・・

2009年10月末、日向(ひなた)の月影を足裏(Aura)に忍(しの)ばせ、奥多摩川の辺(ほとり)へと越しながら、三ヶ月ぶりにオブジェンヌの恋人たちとの再会を果たす。
媚薬(びやく)の匂いと味に魅(み)せられて、劇薬が舞い咲く夢魔(Night-Mare)の実体は、抱(かか)え切れぬほど豊かではあるが、セクシャルな日常を渇(かわ)き求める性癖(せいへき)が、苦蜜のように襲いかかるのは今だ致し方無いのであろう。
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# by hitohiso | 2013-01-04 19:10
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梃子(てこ)はなくとも
絶去(ぜっこ)とならづ

エゴは在(あ)りとて
稽古(けいこ)や当然

闇に空
花に宙
舞に無
母に虚
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# by hitohiso | 2013-01-04 19:06
この物語を、
全(すべ)ての死者と、
∀(すべて)の舞踏歌へ捧(ささ)ぐ。
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★Objet-Romance★

どうしたって愛さずには居(お)られない存在が、永遠に擁(いだ)かれながら、どう仕手(して)も虚空(こくう)をつかまえられなくて、焦(あせ)りと諦(あきら)めの寸法から、淫(みだ)らだけれども真摯(しんし)な言葉を吐く。
「愛さえ無ければ愛する事が出来るのだ」と。

「始めの氣分でしょ?」
「一等終わりから始めるのが数奇(スキ)だな」
熱を乱した私の基底と皮膚が同機して応(こた)えると、
「何だって抽象化するのが観念の仕業(しわざ)よ♪」
そう、儚(はかな)い純数性が囁(ささや)いて消える始末には、割り切れぬ想いが巣立って行くのである。

「今の心を観るが『観念』ならば、何度も助けられ、何度も救われたよのう」
と述懐(じゅっかい)する、空威張(からいば)りにも自負にも似た抑揚(よくよう)は、しぶとくほくそえむ身体を感動させ、魂までもエレクトさせるが、胎(はら)の知れた体が欲情するには未(いま)だ忍(しの)び無く、それかあらぬか、「恐怖や不安を克服するには悲哀が穏当(おんとう)だろう。」と、私と私が出合うエッジ(淵・ふち)が呟(つぶや)くのだった。

「どうせ全部自分なんだって!」
「それが違い無いからこそ訝(いぶか)しいんじゃないか」
「捻(ね)じ曲がった光のシャワーを浴びて仕舞ったんだ」
「そんなことは母なる闇を選んだのだからさ!」

地球の物理さえ儘成(ままな)らぬ身には、肉体を叛乱(はんらん)させて、器官への恩義を返さにゃならんぞ。
器官は空輪(うつわ)じゃから、聞く耳も見る目もありゃせん。
心も情も力も命も空(から)っぽなのじゃよ。

キチガイ・マチガイ・カンチガイの諸君に嘘は吐(つ)かん。
それとも、地獄へ突き落とされた優等生を睥睨(へいげい)しながら、重力への謝罪をいつまでも続ける氣かね?
この宇宙を服用し続けるしか能の無いように・・・・
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# by hitohiso | 2013-01-04 19:05
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★Objet-Romance★

人間が地球にだけ居るだなんて!
努努(ゆめゆめ)夢見る事無かれ・・・・

地球人にとって、太陽は根源の神であり、地球の母であり、万物の胎(はら)でありましょう。
そうした原初の神である太陽の表面温度は、地球人が言う炎熱とは程遠く、亜熱帯ほどの氣温で、生命を快(こころよ)く育(はぐく)むに適(てき)していて、柔らかで闊達(かったつ)な、波しぶきのように振る舞うフレアー(炎波)の火影(ほかげ)に、美しく輝く、たくさんの人が憩(いこ)っているのです。
「心頭滅却すれば火もまた涼し」と云いますが、太陽人は、地球人がその存在を忘れる程近しい存在の大氣を、恋人のように、いつもいつも想いやる事で、(そう!彼等にとっては恋愛こそが生活なのです!)身も心も温(あたたか)かな焔(ほむら)となり、愉悦(エクスタシー)の内に燃え上がって仕舞います。
ですから彼等の心頭は、常に焼き尽くされたニルヴァーナ状態にあって、羊水に浮かぶ胎児のような極樂(パラダイス)をはっきりと意識し、清らかな森と泉に充(み)ち溢(あふ)れる精氣(スピリット)のように彼等を覆(おお)って余り在る陽氣を愛します。
このように愛されている太陽自身は、自分の肌から喜びを発散させ、愛と智慧のエネルギアとして、火炎熱となって地球へと降り注いでくれます。
太陽からの至上の恩恵を悉(ことごと)く得ている地球では、その理(ことわり)を分別して科学的認識をしていますが、その反面、巧妙な集団催眠にも陥(おちい)り、余剰(よじょう)の天使を殺戮(さつりく)しては、唾棄(だき)すべき短絡地獄を産んでもいるのです。

複雑怪奇な宇宙への郷愁(ノスタルジア)は、愚かさと凡庸さを骨の髄まで植え付けられた地球人にとって、曖昧模糊(あいまいもこ)たる夢想事として取り扱われていますが、彼等はその、赤子のように柔らかく傷つきやすい、儚(はかな)いこわれものである、存在と宇宙を思索(しさく)する大元(おおもと)の真実を、嘘と欺瞞(ぎまん)で入念に隠しては幽閉(ゆうへい)し、取り繕(つくろ)った様子が歴然として在るにも関わらず、見て見ぬふりの偽善で露悪なる同胞(どうほう)たちと朋(とも)に、滑稽(こっけい)で馬鹿馬鹿しく空(むな)しい、誠に憐(あわ)れむべき共犯行為を唆(そそのか)すのです。
自らの犯罪行為を執拗(しつよう)に塗(ぬ)り固め、表面にたっぷりと無恥と嫉妬の厚化粧を丁寧に施(ほどこ)した、他人も己(おのれ)も欺(あざむ)き騙(だま)す手法は、刻刻と狡猾(こうかつ)に饒舌(じょうぜつ)になってゆき、愛を汚し、美を傷付け、慈悲に毒を盛り、智慧を殺し、そうやって彼等自身、死んだように生涯を送るのであります。

何と浅ましく無慙(むざん)の人生でしょう!
真実を知る者は排除され阻害される地球人の粗雑な狂氣には、陳腐(ちんぷ)な文明と卑猥(ひわい)な文化が見せ掛けの共起をし、実の無い驚喜をしてくれるのでしょうね。
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# by hitohiso | 2013-01-04 19:00
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★Objet-Romance★

月が日ごと形を変えるのは、月自らが自身を彫塑(ちょうそ)しているから。
己(おのれ)を削(けず)っては消し、消しては加えるその姿勢は、躍る身振りを象徴して余り在るが、月並みの身振りの鋳型(いがた)の中でも、消滅点(Vanishing-Point)に最も近い、眉月とも弓張り月とも呼ばれる、暗月との関係が一等深く親しい、鋭く優雅なカーヴ(弧線)の響きを持つ黄金の曲針が見事!

月は夜も太陽の存在を照らし出してくれる鏡の星。
地球人に美と力を授(さず)け、想像と創造の海を味あわせてくれる。

月の水は火炎のようにからりとそよぎ、太陽の焔(ほむら)は波浪のようにさらりと泳ぐ。
月は太陽の最愛の影であり、太陽は月の至高の光である。
月の人は、無様で不恰好な宇宙服を着た者には見えない。
太陽人は、強情で臆病な狂信者の心眼には届かない。
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# by hitohiso | 2013-01-04 18:52
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深夜の沙漠(さばく)での出来事。
あたり一面、360度の砂地に巨大で面妖な月がかかった。
細い細い、今しがた地平線から産まれたばかりの下弦(かげん)の眉月であったが、両の目に映る砂丘の稜線(りょうせん)の左右、端から端までぎりぎり一杯、180度ほどの距離に離れて基底を持つ鋭角の光の頂点が、砂地からほんの少うし、そう、小さな小さな砂粒ひとつ!浮かびながら、僅(わず)かで微(かす)かだが力強くしなやかに、くっきりと充実した空間を魅せている。
月は、美しい円弧(カーヴ)を両際の双点(そうてん)から上空へと描いて、左右の切っ先を地平線すれすれに漂(ただよ)わせているまま何時間も、その冷たく穏(おだ)やかに放たれた光と朋に、沙漠を優しく懐擁(かいいだ)くような仕種(しぐさ)で、全貌(ぜんぼう)を微動だにしないのであった。
Ω(オーム・オメガ)の文字を天地に創出させた地点のそのちょうど裏側、夜明け前の大海原に異様な光景が現出した。
沙漠に浮かんだ眉月と同等に、これまた巨大で細い細い上弦の弓張り月が、彼(か)の地とは正反対に、弧線の中央を海洋の波頭にふれるかふれないかの際どい芸当を演じながら、時間を停止させたようにいつまでも、両の切っ先を天空に向けてそそり立っていた。

この二つの怪異な光景は似て非なる現象である。
沙漠の月は、永い永い闇を切り裂いて佇(たたず)んではみたものの、月自身が氣付いた時には、もう既にそこに在るという真実に氣付いていないのであったが、大洋の月は、誰にも氣付かれず、そこに存在している何かを月自身が知る事は出来ないという事を知っていたに違い無いのだ。
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# by hitohiso | 2013-01-03 17:55
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双子の月のヴィジョンを観想した仮の人が、月光に浸蝕(しんしょく)されて生じた不完全という財産を雛型(モデル)にして紡(つむ)ぎ編(あ)げたのが、この物語である。

何かが充満している眞空では無く、眞実きっぱり本当に何も無い、存在も非在も宇宙も謎も答も無い、そこからは未来永劫、観念も物語も産まれぬ、絶体絶命・正真正銘の眞空、即(すなわ)ち『無』。
それは、今ここに確かに在るにもかかわらず、生きている内はおろか、死んでから後(のち)でも到底届かぬほど、想像の彼方の遥(はる)か向こうに轟(とどろ)いて鳴る神智の輪舞が、宇宙背景輻射熱の如(ごと)く遍満(へんまん)しながら、その正体を私の皮膜の内側まで翳(かす)めては、まるで悟らせないぞというばかり、あっさり消えて仕舞う・・・・
この仕儀(しぎ)から仮の人は、衝動と焦燥(しょうそう)を、疑念と祈念(きねん)を、悪魔のように恬淡(てんたん)と、天使のように濃厚と彼自身を駆り立てる、自分自身が自分自身を呑(の)み込み無化して仕舞う、その兆候(ちょうこう)に陶然(とうぜん)と耽溺(たんでき)しながら、儚(はかな)く切なく震え続けるのであった。
「『眞』という字が、野たれ死んだ屍骸(しがい)を意味するなら、この宇宙一杯に散らばる物質という名の現象の屍骸をもってすれば、科学的『眞空』は強(あなが)ち間違っていないかも知れぬ。だが、私の『眞空』にそんな猥雑(わいざつ)さなど微塵(みじん)も必要無い。もっともっと超然として静謐(サイレンス)の極致、そう!あらゆるオブジェが、地球上の洒落(しゃれ)た物象やら天空の粋(いき)な象徴やらが、その表裏する愚劣で醜悪な恋人と朋に、綺麗さっぱり悉(ことごと)く消え去った、それこそが畢竟(ひっきょう)、純粋『美』のみ!の超絶樂園であり、私の『眞空』に相応(ふさわ)しいのだ」
と、偏執狂(パラノイア)の滑稽(こっけい)さを露呈(ろてい)させて、仮の人の憑依(トランス)された器官は狂おしくも微笑みながら泣き叫ぶ。

静かな嗚咽(おえつ)を密(ひそ)かに味わう仮の人の実相が呼び寄せたのか、今一人の人物が、仮の人の傍(かたわ)らに彼の影と重なるようにして出現した。
彼の風貌は、老人でいて少年、死者であって胎児という時空を異にした双方の霊魂と肉体の歴史を、それぞれ明確に粒起(つぶだ)たせながら渾然(こんぜん)一体と溶け合わせ、氣まぐれで悪戯(いたずら)者の自然を装(よそお)いながらも、唯一無比の絶対者のように振る舞うので、仮の人は彼、翁童(おうどう)を『イノセンス』と名づけ、答の無い答を解き明かす相手として、自分の影のように親しく接した。
「同じ木から同じ葉が落ちるのも、杯からこぼれた水が又その杯に戻るのも、それらは奇跡(ミラクル)ではなく、迷誤(トリック)の歴史の暗い片隅に追いやられた事実であって、常識の罠(トラップ)に拘泥(こうでい)して、もう一つの世界を知る事も無く一生を終える可哀相な奴隷根性の輩(やから)には不要の神秘(トリップ)なのだよ」
そう、翁童(イノセンス)が教え諭(さと)す未来に向けて、
「洞窟は地球の子宮なのです」
と応対した仮の人の背後には、正三面体の月が忍び笑っていた。
「うだるような熱さや凍(い)てつく寒さでも、洞窟内では快適な温度が保たれ、強風も防いでくれますし、湿氣は火を絶やさない事で解決出来るのです。禅の祖師である達磨(ダルマ)が、洞窟内で面壁七年の修行をしたのも、その心地好さから来る胎内瞑想であったに違いありません」
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# by hitohiso | 2013-01-03 17:52
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翁童(イノセンス)と仮の人の会話を反芻(リフレイン)しながら、昼日中のほどよい混み具合の車輌の座席に腰掛けていたのは、何かの用事で出かけた訳では無かった筈(はず)で、母親が踏む足踏みミシンの縫(ぬ)い針に縫われて仕舞った額(ひたい)の傷跡を元に、新たな巣作りするのが本意であったような氣もするのだが、曖昧さ加減を仕事としていたのかどうか、目的などは大した事では無くなったまま、幽霊のようにふらふらと出向いたのであった。
ひょっとすると、二本の線路が錨(いかり)となって、まるで地海に浮かぶ方舟(はこぶね)を想起させる鉄の塊(かたま)りの軋(きし)み具合が、海中生物の鳴く歌声や胎児たちのじゃれ合い声に変わる瞬間こそが、その時の自分の生理に必要であったが為(ため)に、わざわざ大儀(たいぎ)な体を駅まで運ばせたのかも知れない。
鋼鉄の箱が巨大な水生生物めく、全身を身悶(みもだ)えさせて洩(も)らす嬌声(きょうせい)にも似た響きには、生活という悪夢から解放される微笑(ほほえ)ましさが共鳴するのであろう。
どうでもいいように自動器械さながら、プラットホームから車輌へと体を放り投げるような格好で座席に腰掛けた。永い永い間の内に無視続けられた哲学が蟲の息と変わり果てた、美的センスの欠片(かけら)も寸毫(すんごう)の詩情も無い、四角四面の吊り広告と液晶画面から顔を背(そむ)け、面白みの欠けた乗客を人形化しながら、グレゴリー・ザムザよろしく、毒蟲になった自分が誰もいない車輌の長椅子に寝そべり、春の日差しを麗(うら)らかに浴びながらの新たな旅立ちをぼんやりと夢想しつつ、電車の車掌の低くこごもった、手馴れた様子だが妙に不埒(ふらち)な声色(こわいろ)を使ってのアナウンスを聴くともなく聴いていた。
「次はぁ~~」
そこまでは夢現(ゆめうつつ)であったが、一瞬、間を置いてしぼり出された言葉に、二つの境界に跨(またが)りながら恍惚(こうこつ)としていた私は、強制的にたった一つの世界へと羽交い絞めにされて仕舞った。
「御前だ!」
乗客は他にもいるのだが、誰一人氣付かぬ風の中を、まるで死を想わせるような絶望的文句が、誰でもない私に向かって放たれたのだ。
「次は、御前だ!」と言い、一息おいて、畳(たた)み掛けるように付け加えた言葉、
「開く扉は無い。出口は無いのだ」
ただただ声のみで顔も素性も知らぬ車掌が、私のみに向かってそう断言した事によって引導(いんどう)を渡された氣分の私は、その言葉を溜息(ためいき)と朋(とも)に吸い込み、望んでいた事が今や成就せり!と、この世界とは絶対無関係の位置をとることで、唯我独尊(ゆいがどくそん)たる寂滅(ニルヴァーナ)を味わおうと想い起(た)つのだった。
そうすると、その電車の線路はクライン壺状の笛の音(ね)が淫(みだ)らに咲く理(ことわり)を含んだ、非線型(Non-Linear)で出来ていているのが分かったし、子孫はもう必要無いのだなと合点がいったのであった。
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# by hitohiso | 2013-01-03 17:50
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私に常に寄り添いながら、普段は遠い彼方に離れていて、その影さえ見せない仮の人の姿が、ふとしたはずみで顕(あらわ)れる瞬間があって、それがその朝、やはり唐突(とうとつ)にやってきた。
朝一番の鳥たちの囀(さえず)りには何か特別な意味が在るのではなかろうか?
早朝の鳥たちが交(か)わすハーモニーに、心ならずも動悸(どうき)を覚えながら歩く道すがら、真正面に鎮坐(ちんざ)まします見馴(な)れた石垣を摸造(もぞう)絵のようだなと感じた直後、左側宙空に正坐したように映る、ひらひらと舞い浮かぶ生物がいる。それは小さな小さな純白の羽であったが、地面と平行にふわふわと漂(ただよ)いながら、正面からの石垣を右側に、漂う羽を左側に、仮の人を境界にして分かれながら私の視界から遠ざかる様(さま)は、重力と拮抗(きっこう)して妙に不自然で、小鳥たちの野放図でいて厳格な挨拶(あいさつ)のように、個人的出来事を超えた素晴らしい前兆と受け取られた。
枝の先まで満開の櫻を頭上に、自身の足先を見据(す)えながら歩く仮の人の不様な日常の所作は、誰にも覚(さと)られぬよう、又、自身にも知られぬよう躍る事へのみ雪崩(なだ)れてゆくよう注がれるてはいるのだったが、未開のまま見開かれている櫻たちの目には自明の出来事であって、周知の事実を目の当たりにした彼等の眼に映る仮の人の振る舞いは、キチガイ・マチガイ・カンチガイの空奇(うつく)しい錯乱となるのであった。
土中に咲く根の観る世界から、天空を仰(あお)ぎ見る世界へと順次に堪え忍ぶ自然天然の大らかさとは裏腹に、狭隘(きょうあい)で閉塞(へいそく)した人類への憐憫(れんびん)を、仮の人は微塵(みじん)にも感じまいとするかのように項垂(うなだ)れながら、恍惚と冷厳に踏み拉(しだ)いてゆく。
「私は仮の人間だ。私は私でさえ無い。どこまでもいつまでも実の人にはなれぬ存在なのだ。死して仮の死者となり、仮の世に再生して仮の胎児となる。仮の神にも仮の悪魔にもなろう。眞への近似値、実への漸近(ぜんきん)線が私だ」
仮の人は無の形骸(けいがい)化した自身の姿を前方に運びながら、咲き誇る櫻を後にして黙想し続ける。思索(しさく)する事で漸(ようや)く保たれている彼の魂は、あの羽と石垣と朋に何処(いづこ)へともなく、いつのまにか消えて仕舞った。
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# by hitohiso | 2013-01-03 17:47
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片手に量子銃、片手に星屑を抱(かか)え、唇(くちびる)には非の酒を施(ほどこ)し、背中に虚空を背負ったと思(おぼ)しき人物が、「地球人ヨ、ドケ!」と唄うように街並みを通り抜ける所作には、放り投げるのと抱え込むのとが同時に行なわれて、一氣呵成(いっきかせい)に絶対零度の温もりを撫(な)でて過ぎるといった、反解釈的な親近感があった。
呪いも祝いも同根の双子の兄弟が、よせあつめのコラージュの烏合(うごう)の剽窃(ひょうせつ)の饒舌(じょうぜつ)さに、この上も無く舌鼓(したづつみ)を打ち鳴らす失速剤の世話に始終なりながらも加速する、我が身の不貞極まりない不始末には、甘い甘い、溶けて亡くなって仕舞いそうな甘い想い出が、答の無い答を問い質(ただ)す愚かさを姑息(こそく)な了見で、自身と世界をこれまた撫(な)でまわすのだとしたら、仮の人の仮寓(かぐう)する地球という星の運命は如何(いか)に仕舞われゆくのであろうか?

真善美なるは猛毒ぞ!
偽悪醜なるは良薬ぞ!

翁童(イノセンス)の無心(マントラ)が仮の人の細胞を揺(ゆ)さぶる。

片目が太陽。
片目が月。
鼻に花咲き、
口を誘う。
「耳が跳(と)んで行って仕舞った」
口は海となって太陽と月を呑み込み、
花の香を愉しみながら新しい耳を産む。
双(ふた)つの耳は一対の神。
そうすると、耳年増となった古い耳が戻って来て輪唱した。
「口は災いの種」
「口は幸いの果」
神が和解を執(と)り成して、
古い耳を母とし、
口に対して、神と母を謳歌(おうか)せよと説いた。
こうして宇宙は交響していく・・・・♪
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# by hitohiso | 2013-01-03 17:44
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『私共は御客様に対して、感動や幸福の無理強いを決して致しません!』
「おっと、こうきたもんだ!同時代の本質を形骸(けいがい)化したまんまによ、飽(あ)きられ捨てられちまったレディ・メイドの墓守(はかもり)が声高に、さも自慢氣にそうやって宣伝するんだけんど、当(とう)のその墓場にゃぁ、拠所(よりどころ)の要らない体がもんどりうって屯(たむろ)していてよ、興味の矛先(ほこさき)へ勝手御免と、日がな一日の幸福の孔(あな)が穿(うが)たれてるっつぅ~遜(へりくだ)りようでさね♪」
胎(はら)の蟲がそうやすやすとは治(おさ)まらない氣取り方で、世の中を茶番化しようと躍起になった御仁のこうした警句(けいく)には、辛辣(しんらつ)な優しさが至極さっぱりと充満して果てし無く伺えるのであった。
「よそよそしい事象には事欠かないのだがね、事象地平(イヴェント・ホライズン)が世界の涯(はて)なのだと了解する破廉恥(ハレンチ)さには、腹を空(す)かした妖精が笑いながら泣きじゃくるってえ~具合の、実存の不甲斐無(ふがいな)さを常套(じょうとう)手段としちまうあざとさがあるのよ」
子孫を不要とする界隈(かいわい)に棲(す)む虚空人の醸(かも)す酒を呷(あお)りつつ、こう宣(のたま)う御仁の吐息は、光の香に包まれて仕合わせそうに輝いていた。
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# by hitohiso | 2013-01-03 17:44
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一年一度の逢瀬(おうせ)を恐怖する、一生一体の不安者へと巧妙に洗脳されながら、仮の人の心身は狡猾(こうかつ)に順当に脱落(とつらく)していった。
その一年一度のアヴァンチュールの日に、高熱に魘(うな)されて横臥(おうが)する仮の人の全身に圧(の)し掛かった、尋常(じんじょう)でない重力の厚みは、深海に突然投げ込まれた一次元よりも細い線蟲が否応無しに知る事になる、太く重く暗い、濃密で底知れぬ、限りが有りながら永遠の奥行きをもって襲い来る、圧倒的な不条理の絶対性に充(み)ち充(み)ちていた。
ただならぬ重力の黒黒と凝縮(ぎょうしゅく)した厚みが、重い重い布団そのものとなって、仮の人を金輪際(こんりんざい)離さぬぞ!とばかり押さえ込むのであった。
ぎりぎりと丸く円く蹲(うずくま)りながら、こなごなに潰(つぶ)される手前の、丁寧さに欠ける体の使い方を責められては、致し方の無い屈辱を味わうしか方角が定まらぬのか、ぐるぐると重く圧縮回転する体の膨張を喰い止める事は不可能に想われる、少年から情念への耽溺(たんでき)!
仮の人の全身を容赦(ようしゃ)無く蹂躪(じゅうりん)して止(や)まない、渦巻き暴れ捲(まく)る夢魔の圧力は、一点の過ちも一欠けらの曖昧(あいまい)さも見逃さぬ勢いで、執拗(しつよう)に激しく、仮の人に対して完全・完璧を強要する。
微塵(みじん)の不完全性も宥(ゆる)さぬ熱の権力の行く末は、仮の人の不完全性を悉(ことごと)く消失させ、夢魔自身と同化させるまで続く。
これ以上抗(あらが)い切れない領域まで追い詰められて、逼迫(ひっぱく)した仮の人の魂が、夢魔との戦いに終止符を打つのは、その圧力に屈して受け入れざるを得ない、その時、その瞬間が常であった。
両者の戦いが飽和点に達すると訪れる、不思議に解放された酔い心地の如(ごと)き奇妙な風景を、仮の人はさも躍り尽くしたように仕舞うのであったが、事はそんなに安直では無い。
「事は終息した。集束した虚点(ありか)には、発散された虚無が絶対を嘲(あざ)笑うように収まっているではないか!」
仮の人の徒労(とろう)の響きが、砂を噛(か)んで散らばっていく。
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# by hitohiso | 2013-01-03 17:41
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深海の海底に佇(たたず)む生物たちが、そこが氷点間近の水温で、光が殆(ほとん)ど届かない闇黒の世界にも関わらず、原色を帯びて咲いているという事実は、私達に何を伝えようとしているのであろうか?
「おうおうおうおうっ!病める種である人類諸君よっ!貴様達は人の不幸を祝い喜び、人の幸福を恨み呪う、人間ならば誰しも抱えている狂氣を決定的に笑わにゃならん。さもないと病院行けば殺される、学校行けば犯される、聖地に行けば無限の餌食(えじき)んなるっちゅう具合で、この麗(うるわ)しく見事、可憐かつ優雅な地球という稀有(けう)な星を、なまじっかじゃぁ到底やりきれんほど、辛く悲しく淋しい苦行の場とせんにゃならんぞよ」
こうした御仁の歓呼(かんこ)たる歌声には、毒毒しい原色からなる魔法の煌(きらめ)きが迸(ほとばし)っていたが、灰色の風が時折り流れ込む地下鉄の無機質な坑道(こうどう)に、間隔を置いて配置された、白い裸体たちのオブジェ群の密(ひそ)かさめく、厳(おごそ)かな熱情も隠されていたのであるよ。
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# by hitohiso | 2013-01-03 17:35
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吹き飛べ!吹き飛べ!
風も、空も、闇も、光も。
吹き飛べ!吹き飛べ!
無も、舞も、生も、死も。

遙(はる)か遠くに山並みを望み、広大な平野を縦断して大海へと注ぐ川の河口岸近く、前は田畑であったろう平原地帯を区画整理して出来た、都心郊外は新興住宅街の最初の住人だったのか、はたまた先住者であったのか、広く広く、どこまでも広く拡がり続ける河川敷のような平野の虚点(ありか)に住まう、河原乞食の末裔(まつえい)としての一家族がいた。
これは、昭和の乳房の萎(しな)びた風情にガタピシと閉じ込められ、人ひとり通れぬ程近づく両隣の外壁に挟(はさ)まれた、陽(ひ)の当たらぬ風通しの悪い古ぼけた安普請(やすぶしん)の平屋建てを棲(す)み処(か)とする、その一家族の長男坊の話である。

暗くしとしとと湿(しっ)けていて、埃(ほこり)と脂(あぶら)でうっそりと覆(おお)われ、そんなことはどうでもいいというように、思想も美学も投げ遣(や)りに無視した、どぎつく安っぽい器物に囲まれて過ごす少年の日常は、毎日夕刻になると始まる隣家の夫婦喧嘩を、馴(な)れ親しんだように聞く耳をおぞましく見据(す)えながらも美への欲望を発散出来無い両の目を扱い兼ねていたし、身動きがとれないまま統合性を欠いて寄る辺の無い、鬱鬱(うつうつ)と愉(たの)しまぬ、そんな家内の空氣を吸い込む咽喉(いんこう)を憐(あわ)れみながら蔑(さげす)む風潮に支配されてもいた。
家からすぐの小さな駅の踏み切りを越え、田畑を左右に見ながら緩(ゆる)い坂を上るとそこが堤防で、少年の父親が子供の頃泳いだとされるその川は、今は濁(にご)り肥(ふと)って醜(みにく)く、とても泳ぐ氣にはなれぬし、そうなってしまった歴史の罪悪を見せ付けられた想いがして、すこぶる不快の念を擁(いだ)きながら、同級生の少年や、一つ下の妹との擬似セックスに逃避と俯瞰(ふかん)を覚えたり、マッチでの火遊びで燃え移ったカーテンに残された嘘臭(うそくさ)い焦(こ)げ痕(あと)に、諦観(ていかん)と不満を募(つの)らせたりして暮らしていた。
夜半近く、近所を自転車で走り抜けながら「火事だぁーーっ!」と叫ぶ狼少年は、ドブ板を踏みはずして汚水に塗(まみ)れた、臭くて情けない昼間の足に仕返ししようと、ヤッカミ半分、自浄半分で、淋しく物憂(ものう)げな自分を鼓舞(こぶ)するのだが、茶番は茶番のまま、神秘も奇跡も蚊帳(かや)の外で、寝入り端(ばな)の天井の板の目に不氣味な象徴を見出そうとしては、天井裏の鼠(ネズミ)たちの運動会から不吉な呪文を聴くのである。
誕生日のバナナに惑(まど)わされた少年の、常日頃囲っていた闇が突出したのもやはり誕生日であって、内外(うちそと)の解離(かいり)が産(う)んだ自(みずか)らの業(カルマ)の味氣(あじけ)なさにはほとほと参る術(すべ)も無い在(あ)り様(さま)で、塩っ氣が抜けていく体のだらしなさを傍観(ぼうかん)するのみであった。
冥(くら)い暗い自らの奥底を覗(のぞ)く勇氣が欲しい癖(くせ)に騙(だま)された少年の体の暗闇で、夜毎繰り広げられる虚癖宴(きょへきえん)なる儀式が齎(もたら)す効用を少年自身が解明するには、猜疑(さいぎ)心に満ちた少年自身という器官の活躍と、慙愧(ざんき)の念に引かされた少年自身という出来事を超えた未完の器(うつわ)の、何事かへの没頭(ぼっとう)が必須となるのである。
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# by hitohiso | 2013-01-03 17:33
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初めてのキッスは、十二支が刻印された時計台のある、柔らかな鉄と石とで出来た小学校の、星屑を集め鋳造(ちゅうぞう)して濾過(ろか)させた、霧吹き木造仕立ての階段躍り場で、ほっぺたのふっくらした丸顔の優しく可愛い少女とでした。
柔らかに潤(うるお)う唇の感触に、足元の床が雲の布団のように温かくふわふわと応えてくれましたっけ。
特殊な少年ばかりを好んだ彼の性癖は、苛(いじ)めっ子の寡黙(かもく)と卑屈が、御調子者の不調法に憑(つ)かれながら演じられていたのですが、そのカンチガイの誘惑が彼自身を騙(だま)し唆(そそのか)しては反撃を加えるのですね。
その反撃に恐れを為(な)した彼は、それを観まい!と目玉を凍結させ、萎縮(いしゅく)してゴツゴツとした眼差しで禁巳(きんみ)の少年を射っては、罵詈雑言(ばりぞうごん)の言い訳を浴びせたものでした。
己(おのれ)の純真さに迷惑したり安堵(あんど)したりしながら取る校庭での相撲は、アヤトリとオハジキが立体シールに結実するように、少年少女の下敷になっては、ゴーカートに揺れる速度の熱ごと放り投げられたりして、使い物にならなくなった物事を少な目に勘定する習慣が身についていくのですよ。
一方は不可通の嫌悪、一方は交歓し合う好感、そうした皮算用も習うとなると照れ臭いものですね。
特殊学級の智恵ちゃんは彼の言うことを何でも聞いてくれました。
「おっぱい見せてくれ」
そんな注文に彼女が、白いブラウスのボタンをそろりそろりとはずす風合いは、溜息が出るほど優しくって奥床しくって、ふっくらふくらんだ白痴の少女のおっぱいを見せてもらった彼は、その仕草に、その肉体に、架空の姉と母の混交体を夢想するのでした。
学校外で出合う彼女は、いつも彼女の母親と一緒でしたが、その母親の目を盗んで交わした彼女との秘密の合言葉「やっしょ♪」「まかしょ♪」は、二人だけの呪能をもち、二人だけの舞台を瞬(またた)く間に起ち上がらせるのです。
少年王国のピエロが王様に化けて裸に晒(さら)されました。
脱糞(だっぷん)少年だって立派に授業を促進するんだから、布団いっぱいに世界地図を描く寝小便小僧なんぞは尊敬に値するのですね。
半ズボンから、少年のとは想われぬような巨大な陰茎(いんけい)をはみ出させて走る学校随一のトップ・ランナーは、南方系の顔立ちをした八百屋の息子でした。
その雄大でエネルギッシュな走りっぷりが氣に入った彼は、大人びた八百屋の息子に憐(あわ)れみをかけて欲しくて火事場狂言を演じたのか知ら?
土手を渡って来る風に追い越されながら、自身の魂が離れて行く発火点へと、暗く淋しいあきらめを運んでは砂埃(すなぼこり)と化すのですよ。
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# by hitohiso | 2013-01-03 17:31
裂くるや新月
風高く
虹が音色に
恋放つ

トレーシング・ペーパーと方眼紙が滅法(めっぽう)数奇(すき)だ。
半透明で物分りのよくない風情が滲(し)み込んでいるトレーシング・ペーパーを、ミリ単位の方眼紙に重ねて占う未来は、人が嫌い厭(いと)う自由という原初の力がもんどりうって定着しているようで切なくいとおしい。
そのように仕向けられている体の在り様こそ訝(いぶか)しく想われるのだが、怪しさも又心積もりになっていくものだから、ヴェクトル癖にはしこたま翻弄(ほんろう)される由縁なのであろう。
拘束(こうそく)される快感は確かにあって、予定調和時刻が遅延するたびに先の後悔が迸(ほとばし)り出ては不失を為(な)す始末なのだ。
重ねた紙の真ん中に絵具を一滴垂(た)らし、その上から水を少々かける。
口を窄(すぼ)め定点へ向けて一氣に吹くと偶然の本質が伺えるって寸法だ。
惚れ惚れと見蕩(みと)れる自己の奇跡は世界の謎だ!
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# by hitohiso | 2013-01-02 23:36
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さまざまの欲は須(すべから)く喰われる。
私達の欲は一等のエネルギアを持ち、摂取者を永遠の超存在に仕立て上げる。
摂取者は「闇」から選ばれ、「無限」との共謀を図り、その結果を「神」へと委(ゆだ)ねる。
自身が自身を喰らうメビウス状の毒蛇に、巧妙な虹細工を施(ほどこ)す欲の仕業には、「からだ」というこれまた絶妙なソフティック・ハードがいとも簡単に誘惑されてしまう、図抜けた魔力に充(み)ち溢(あふ)れているのである。
生きたい。活かしたい。死にたい。殺したい。躍りたい。救いたい。助かりたい。消えたい。忘れたい。知りたい。愛したい。苦しみたい・・・・
どれもこれも切実な「自欲」ではあるが眞実ではない。
欲そのものに眞(まこと)なぞ無いのだ。

自分とは自(みずか)らを分かつという解釈に従うなら、他者へと世界へと分散・変容していく現象こそ「自(おの)ず」であろうし、「自」の字源が正面から見た鼻だとすれば、古代の薫香(くんこう)が匂い起ち、未来へと羽ばたいてゆく色香を嗅(か)ぐ想いに駆(か)られるのも興(こう)が湧(わ)くというものだ。
世界に、全宇宙に、遍満(へんまん)する自己!

人間症に罹(かか)った能天氣な物知り顔をした、操り人形のように息もしないでギクシャク動く凡愚の聖性を裏切るがいい!
夜色に覆われた巨大な球が都市の幹線道路を縦横無尽に転げ回る。
傍観者の愉快は絶え間無く揺す振られ、当事者の悲惨は空っぽのオブジェをつかみ損ねるばかり。
寂しく退屈なオブジェの不幸に魅かれた、怪しく快活なオブジェンヌの仕業が産む数数の物語。
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# by hitohiso | 2013-01-02 23:32
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表面の裏側は海だった。

海は、雲か霧かのように透り抜ける。
圧力や重力を軽やかに手懐(てなず)けて。

底を返すと星空が雪崩(なだれ)込んできた。

底無しの闇の眩(まぶ)しさに眼を潰(つぶ)された光の子等が、
星空から降って湧(わ)いた。

片輪で不具のフォトン・ベイビーは、
聖愚同体の玩具となった。

月の産まれる遙か昔。
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# by hitohiso | 2013-01-02 23:30
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人類はとうの昔に滅亡、
私達の地球も消えて仕舞って幾久しい頃の話。

そんな事は生者には不可能だって?
とんでもない!
想像と創造の産物は宇宙に遍満してるじゃないか☆
物質の将来が光だなんて、仮説に過ぎないよ。
闇が母ってわけかい?
言葉遊びさ♪
オブジェンヌへの恋心だね。
我慢なのかしら?
死という通過儀礼が解決してくれるだろうね。
死ぬのは他者ばかりなりと・・・・
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# by hitohiso | 2013-01-02 23:01
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それは、人間の形をした肉蟲だった。
深く、光の届かない、真っ暗な海の底に、四肢を投げ出し坐って居る男。
中性者のような肌を艶(なま)めく表わし、ふわふわと揺らめく頭上には、大きな漆黒の冠を水風になびかせて、男は一人、坐って居る。
彼を襲い、包み込んでいるだろう、猛烈な水圧は皆目感じられず、ゆるやかな空氣に、ざらついた水っ氣が絡みついているようなその風景は、無限の闇色のグラデイションの只中、その男を躍らせている。否、彼こそが、その世界を躍らせているのかも知れぬ。
太古の昔、大氣は濃密で、体を動かせば、そのまま中空に、空氣の塊(かたま)りを掻(か)き出せる程で、風の具合によっては、体ごと浮かせたり、雲と戯(たわむ)れたりも出来るのだった。
それに比べ、湖沼や河川、太洋の水水は、とてもとても軽く稀薄で、水に体を浸(ひた)しても、瞬(またた)く間にサラサラと乾いて仕舞う。
ちょうど、そんな風な、ドライでダークな霧の世界の奥底に、人型をした肉蟲は、弛緩(ちかん)と緊張を非連続的に輝かしながら、息もせず、暮らしているのであった。

一歩、一足飛びに又一歩、消滅点へ向かって、変容していく現在者。
目前に出合うは、自由の門。
その右手に「運動の垣根」、左手に「停止の垣根」が廻(めぐ)らされている。
「運動の壁」には錯誤と蒙昧(もうまい)の歴史が蔓延(はびこ)り、「停止の壁」には退廃と狂氣の生活が塗り込められていた。
門前の風は、生温かく薄氷のように凝結していて、真綿のような星の欠片(かけら)が、鋭くスピンしながら、宙空に貼り付いている。
ゆっくりと薄紙を剥(は)ぐように自由の門をくぐる。門下に一瞬立ち止まると、前面も背後も上下左右も無くなって、無重力のまま、生死から放り出された。
その瞬間、愛智と平和の使者たちに出迎えられ、「罪業の参道」を一歩一歩、一足飛びに、不明瞭に足が差し向かうまま、どこへと知らず、地面に導かれるように進んで行くのであった。
脚下を見渡すと、嫉妬と後悔の脅迫が、大津浪となって押し寄せて来る。おぞましい無恥と愚かな驕慢(きょうまん)が、周囲に纏(まと)わり憑(つ)いて離れない。
怠惰で浅慮な侮蔑が、皮膚を喰い破って肉へと突き刺さるようだ。
あらゆる悲惨も苦痛も児戯に等しいのだと、自ら言い聞かせながら、呪うが如く歩み、祝うが如く佇(たたず)む。
人類の滑稽さを笑止しながら嗚咽(おえつ)しては、厳然と空虚な鼓動を鳴り響かせる「罪業の参道」は、産みの親の胎中でもあろう。
参道は産道でもあり、その向う岸には、出口であり入口でもある、巨大な半球形の建造物が朧(おぼろ)に霞(かす)んで見える。
退屈で閉塞した人生を死に急ぐ、茶番人たちの度し難く見苦しい痴呆劇を傍観しながら、彼方に浮かぶように佇(たたず)んでいる球体の館へと意識を走らせた。
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# by hitohiso | 2013-01-02 22:57