☆ムマン☆夢魔なる能熱

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一年一度の逢瀬(おうせ)を恐怖する、一生一体の不安者へと巧妙に洗脳されながら、仮の人の心身は狡猾(こうかつ)に順当に脱落(とつらく)していった。
その一年一度のアヴァンチュールの日に、高熱に魘(うな)されて横臥(おうが)する仮の人の全身に圧(の)し掛かった、尋常(じんじょう)でない重力の厚みは、深海に突然投げ込まれた一次元よりも細い線蟲が否応無しに知る事になる、太く重く暗い、濃密で底知れぬ、限りが有りながら永遠の奥行きをもって襲い来る、圧倒的な不条理の絶対性に充(み)ち充(み)ちていた。
ただならぬ重力の黒黒と凝縮(ぎょうしゅく)した厚みが、重い重い布団そのものとなって、仮の人を金輪際(こんりんざい)離さぬぞ!とばかり押さえ込むのであった。
ぎりぎりと丸く円く蹲(うずくま)りながら、こなごなに潰(つぶ)される手前の、丁寧さに欠ける体の使い方を責められては、致し方の無い屈辱を味わうしか方角が定まらぬのか、ぐるぐると重く圧縮回転する体の膨張を喰い止める事は不可能に想われる、少年から情念への耽溺(たんでき)!
仮の人の全身を容赦(ようしゃ)無く蹂躪(じゅうりん)して止(や)まない、渦巻き暴れ捲(まく)る夢魔の圧力は、一点の過ちも一欠けらの曖昧(あいまい)さも見逃さぬ勢いで、執拗(しつよう)に激しく、仮の人に対して完全・完璧を強要する。
微塵(みじん)の不完全性も宥(ゆる)さぬ熱の権力の行く末は、仮の人の不完全性を悉(ことごと)く消失させ、夢魔自身と同化させるまで続く。
これ以上抗(あらが)い切れない領域まで追い詰められて、逼迫(ひっぱく)した仮の人の魂が、夢魔との戦いに終止符を打つのは、その圧力に屈して受け入れざるを得ない、その時、その瞬間が常であった。
両者の戦いが飽和点に達すると訪れる、不思議に解放された酔い心地の如(ごと)き奇妙な風景を、仮の人はさも躍り尽くしたように仕舞うのであったが、事はそんなに安直では無い。
「事は終息した。集束した虚点(ありか)には、発散された虚無が絶対を嘲(あざ)笑うように収まっているではないか!」
仮の人の徒労(とろう)の響きが、砂を噛(か)んで散らばっていく。
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by hitohiso | 2013-01-03 17:41